部下を成長させる、適切なフィードバックの方法

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「フィードバックは、優しさである」

私は、そんな風に思います。フィードバックがなければ、人は自分を客観視できません。部下を成長させるためには、フィードバックは必須です。

しかし、そんなあなたの優しさとは裏腹に、部下はあなたのフィードバックについて「余計なお世話だ」「そんなものは求めていない」と感じているかもしれません。そう、フィードバックは部下を成長させるために、とても有効な手法であると同時に、誤った方法で行ってしまうと、部下との関係を壊しかねない手法でもあるのです。

今回は、部下を成長させる適切なフィードバックの方法についてまとめました。ぜひ、みなさんの業務にお役立てください。

なお、今回は鳥原隆志さんの著書「気づかせる技術」を一部参考にしています。マネジメントに悩んでいる方にとてもオススメの良書なので、興味がある方は購入してみてください。

 

目次

そもそもフィードバックとは?

フィードバックとは、第三者の目線から、相手の言動を客観的に評価し、伝えることです。人は、主観を通してしか自分を振り返ることはできず、自分の言動を100%客観的に見ることはできません。

そのため、相手に気づきを与え、変化させる手法として、フィードバックが用いられます。

フィードバックの目的は、「気づき」を与えること

あなたは、フィードバックの目的を「相手をこちらが望んだ方向に変化させるため」だと思ってはいないでしょうか。これは、半分正解で、半分不正解です。

フィードバックを行う目的は、ひとことで言えば、「気づき」を与えるためです。人は気づくことでしか、本当の意味で変われません。叱ったり、褒めたり、何かしらのインセティブを与えても、それは一時的な変化に過ぎないのです。

「あれだけキツくいったから、あいつも心を入れ替えただろう」と思ったら、すぐに元に戻ってしまった、という経験はないでしょうか。

賞罰などのインセンティブを与える動機付けの方法を、「外発的動機付け」といいます。外発的動機付けは、短期的に相手を思い通りに動かすには有効ですが、長期的に相手を変えるためには不十分です。

長期的に相手を変えるためには、「内発的動機付け」が必要です。内発的動機とは、「やりがい」に代表される、自身の内側から湧き上がるモチベーションのことです。

たとえば、ボランティア活動を例に考えてみましょう。ボランティア活動に参加する人の多くは、内発的動機によってボランティアに参加しています。

ボランティア活動には、賞罰がありません。いくら頑張っても、金銭は得られませんし、逆に頑張らなくても、叱られることはありません。では、なぜ人は好き好んでボランティアに参加するのか。それは、ボランティアに参加することで、他者への貢献感や、やりがいを感じることができるからです。そして、他者への貢献感ややりがいといった、内発的動機によって支えられた活動は、賞罰がなくとも、長期的に継続できるのです。

つまり、長期的に人を変えるためには、内発的動機を与えなくてはならないのです。

では、どうすれば内発的動機を与えることができるか。それは、相手に「自省」させることです。あなたが答えを教えるのではなく、ヒント(刺激)を与え、相手に考えさせ、気づかせる。これが重要です。そして、気づきを与えるための手法の1つが、フィードバックです。

ただし、「気づき」には1つだけ注意しなければならないことがあります。それは、気づきを与えたとしても、相手はこちらが思っている方向に変わるとは限らないことです。フィードバックの結果について、内省するのはあくまでも聞き手です。フィードバックの事実をどう受け取るかは、相手次第なため、相手はあなたの望んだ方向に変わらないかもしれません。

これが、冒頭で、「フィードバックの目的は、相手を思った方向に変えることだという認識は、半分正解で半分不正解だ」と言った理由です。あくまでも、フィードバックにできることは「気づきを与えること」のみです。

上記をしっかりと押さえた上で、次章「フィードバックの方法」を見ていきましょう。

部下を成長させる、5つのフィードバックの方法

効果的なフィードバックを行うには、いくらかの方法があります。今回は、部下を成長させる、5つのフィードバック手法をご紹介します。特に、最初の2つ「客観的に」「フラットに」は、部下を成長させるフィードバックの鉄則です。

1:客観的事実を伝える

フィードバックは、客観的事実をフラットな立場で伝えることが大事です。

「君は仕事ができないよね」といったフィードバックは、主観的事実であり、客観的事実ではありません。(そもそもこういったフィードバックは、部下の人格を否定することになるので、望ましくありません)

客観的事実とは、たとえば数字などの、誰からみても解釈が揺れない、明らかな事実を指します。フィードバックにおいて、客観的事実を伝えなければならない理由は至極単純です。それは、客観的事実の方が、部下の納得感を得やすいからです。

たとえば、あなたは「君からは仕事のやる気を感じられないよ。もっと努力しなさい」というフィードバックを上司から受け取ったら、どう感じるでしょうか。おそらく、「なんでそんな風に言えるんだ」「この上司に、俺の何がわかるっていうんだ」と感じるのではないでしょうか。

一方で、以下のようにフィードバックされたらどうでしょう。

「君は、遅刻がとても多いようですね。ここ1ヶ月で、3度遅刻をしていますね。また、依頼された仕事を完遂せず、誰にも報告せず帰宅してしまったとも聞いています。これでは、周りから仕事のやる気がないと見なされても無理はありません。」

ここまで客観的事実を並べられたら、先ほどのような「お前に何がわかる」という気持ちは湧き上がらないはずです。

フィードバックでは、客観的事実を伝えましょう。

2:フラットな立場で伝える

フィードバックは、あくまで対等な立場で行いましょう。上から目線でフィードバックすると、部下は身構えてしまいます。さらに、上から目線でフィードバックをしてしまうと、部下は「上司の言うことだから、聞いとかないとな」と感じてしまい、内省の機会を奪います。

3:出来るだけ早くフィードバックする

フィードバックは、鮮度が命です。なぜなら、人は過去に起きたことを都合よく解釈し直してしまうからです。

時間が経過すると、本当は自分のミスだったのに、「あの時はあいつが悪かった」「自分と同じことをやっていたやつも他にもいた」といったように、人は自分の都合のよいように事実を解釈し直します。

これは、脳の防衛反応であり、人間なら仕方がありません。だからこそ、フィードバックはその場で行うべきなのです。

4:具体的にフィードバックする

フィードバックは、具体的に行うことを心がけましょう。「君はここがあまり良くないね」「ここをもっと頑張った方がいい」といったフィードバックは抽象的で、部下も直しようがありません。抽象的な表現は、数字に置き換えることを意識するだけで、グッと具体的になります。

抽象的なフィードバック

君はちょっと残業が多いみたいだね。もっと早く帰りなさい。

具体的なフィードバック

君はちょっと残業が多いみたいだね。まずは、30分早く退勤する目標を立てようか。そのために、どうしたらいいか、一緒に考えていこう。

5:行動を再現してみせる

行動の再現は、とても強力なフィードバック手法です。行動の再現は、視覚情報によるフィードバックであり、相手は自分の行動をより客観的に見ることができます。

たとえば、部下のプレゼンについてフィードバックするとしましょう。あなたは、部下に「ちょっと話すのが早いね」「体が動いているよ」というフィードバックをしました。

ところが、部下の行動はなかなか治りません。こういった場合、部下は「自分のやり方がベストであり、指摘されるようなところはない。むしろ、余計なお世話だ。」と感じている可能性があります。

フィードバックを素直に受け入れられなければ、相手の行動を変えることはできません。こういった場合に有効な手法が、行動の再現です。

今回の例で言えば、部下のプレゼン方法をあなたが再現してみせることで、「あれ、俺ってこんなに早口で話してたんだな」「あ、確かに聞き手側から見ると、体の動きって気になるな」と部下に気づいてもらえるのです。

やってはいけないフィードバックの方法

フィードバックには、「これだけはやってはいけない」という方法があります。この章では、やってはいけないフィードバックの方法についてご紹介します。

部下に反省や自省を促すのではなく、否定を促すフィードバック

最悪なフィードバックは、部下に反省や自省を促すのではなく、否定を促すフィードバックです。否定とは、部下の人格や人間性をに対し、反省を求めるものです。

反省・自省・否定の違い

  • 反省・・・行動に対し、改善点を見つけること
  • 自省・・・自分の考え方や行動について、感情を抜いて、客観的に見つめること
  • 否定・・・性格や人間性に対し、反省を求めること

人は誰しも、考えがあって行動をしています。あなたから見ると馬鹿げた行動ばかりとる部下であっても、自分なりの「考え」があって、その行動をしているのです。

そのため、あなたに必要なことは、部下の「考え方」について、自省を求めることです。「なぜそういう考え方をしたの?」「他に方法はなかったかな?」というように、あなたは部下の行動の裏にある考え方について、深掘りしてあげましょう。

間違っても、「お前は本当にバカだな」「こんな簡単なこともわからないなんて、どうかしてる」といったように、部下の人間性を否定をしてはいけません。

部下の心理的安全が得られない場所でのフィードバック

部下の心理的安全が得られない場所でのフィードバックは控えましょう。なぜなら、心理的安全が得られないと、部下は心を開かず、あなたのフィードバックを受け入れないからです。

心理的安全が得られない場所とは、たとえば公衆の面前です。人が多いところで怒鳴り散らしている上司をたまに見かけますが、この行為は最悪です。公衆の面前では、部下はあなたのフィードバックを聞き入れる心の準備ができていません。

そんな中、フィードバックをしても、一切部下に気づきを与えられないでしょう。フィードバックをする際は、部下が落ち着いて考えられる環境を作りましょう。

部下に考えさせるのではなく、答えを教えるフィードバック

気づきは、内省から生まれます。そして、内省は自分自身を振り返り、深く考えることで生まれます。

そのため、あなたが答えを教えてしまっては、部下に気づきは与えられません。フィードバックでは、ヒントは教えても、答えまで教えないようにしましょう。

答えを教えることは、優しさではありません。答えを教えることは、部下の成長機会を奪うことに他なりません。

1度にたくさんのフィードバックをする

部下にたくさん気づいて欲しいからといって、1度にたくさんのフィードバックをすることは避けましょう。なぜなら、多すぎる気づきは、印象に残らないからです。

たくさんの気づきを得たとしても、人が1度に意識できる(つまり行動に落とせる)ことは多くて5つ、平均で3つくらいです。そのため、フィードバックする側は、「今回はこれとこれに気づいてもらおう」といった具合に、フィードバックする事柄を絞る必要があります。

たくさん伝えすぎて、部下にもっとも気づいて欲しかったことが埋もれてしまっては本末転倒です。

終わりに

今回は鳥原隆志さんの著書「気づかせる技術」を一部参考に、フィードバックの方法についてご紹介しました。人が本当の意味で変わるときは、「行動」「自省」「気づき」「変化」というプロセスを辿ります。そのため、よい上司の役割は、部下「気づき」を与えることです。

「気づかせる技術」は、ビジネスだけでなく、日常生活でも使えるノウハウがぎゅっと詰まった1冊です。ぜひ手にとってみてください。

 

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